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2024-02-17 (Sat)

Jackson Browne   I'm Alive

Jackson Browneの第10作。1993年リリース。   本作はJackson Browneファンの間では、〝復活作〟として受け止められ、大いに歓迎された。前作「World in Motion」、前々作「Lives in theBalance」が政治的なメッセージが強く、音楽的には魅力に乏しいものだったことがこうした反応を導いたようだ。   私も本作を聴いて、何となくホッとした。私の青春を彩ってくれたJackson Browneが戻ってきた、そんな感慨...

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Jackson Browneの第10作。1993年リリース。

 

本作はJackson Browneファンの間では、〝復活作〟として受け止められ、大いに歓迎された。前作「World in Motion」、前々作「Lives in theBalance」が政治的なメッセージが強く、音楽的には魅力に乏しいものだったことがこうした反応を導いたようだ。

 

私も本作を聴いて、何となくホッとした。私の青春を彩ってくれたJackson Browneが戻ってきた、そんな感慨を覚えた。そして、出来上がりとしては前2作から格段にレベルアップしているのに、全米アルバムチャートでは40位と、前作「World in Motion」の45位は上回ったものの、「Lives in the Balance」の23位には及ばないという、微妙なランキングも、Jackson Browneファンの奥ゆかしさを表しているようで面白い。

 

本作の背景情報として外せないのは、女優Daryl Hannahとの離婚だ。離婚成立は本作リリース前年の1992年。WikipediaDaryl Hannahの項では、Jackson BrowneDaryl Hannahに対して身体的虐待を加えていたという誤った報道があったと記されている。

 

この報道に対してはJackson Browneが名誉棄損として訴え勝訴、報道は撤回されたようだが、Jackson Browneとしては大いにストレスとなっただろう。この誤報が離婚にどう関わったのかは分からないが、離婚に向けてのさまざまな動きも心的な負担となったに違いない。

 

こうした事実を知れば知るほど、Jackson Browneのようなタイプのアーティストの業の深さを感じる。望まない状況に追い込まれると、本作のような充実作が生み出される。逆にDaryl Hannahと幸せな生活を送っていた1980年代に制作した2作はやや魅力に欠けていた。1人の人間の人生として考えると、実に皮肉な回路の中に放り込まれているわけだ。

 

そんな回路の中で生み出された本作は、タイトルチューン「I'm Alive」で始まる。Jackson Browneとしてはそんな意図はなかったのかもしれないが、長年Jackson Browneを聴いてきたファンには復活宣言のように聴こえる。曲は切れのいいロックチューンで、Jackson Browneのボーカルも伸びやかだ。

 

本作には全10曲が収録されている。その10曲がいずれも一定水準以上の出来で、本作が流れている間はどの瞬間を切り取ってもJackson Browneが立ち上がってくる。その度にJackson Browneはさまざまな表情を見せてくれるのだが、その面差しはどこか懐かしく、また新鮮でもある。

 

私がそんな思いを特に強く感じたのは、本作中ほどにある「Too Many Angels」だ。やや平坦な感じで曲は始まるのだが、2コーラス目あたりでコーラスがかぶさってくると、一気に曲に厚みが出てくる。

 

この曲を聴いていると、Jackson Browneのデビューアルバム「Saturate Before Using」(「Jackson Browne」が正しいタイトルらしい)収録の「From Silver Lake」を思い出す。「From Silver Lake」は2つのメロディが交差しながらリリカルな世界を織り上げた、隠れた名曲だ。

 

Too Many Angels」のコーラスは「From Silver Lake」ほど自立したメロディを持っているわけではないが、主旋律を引き立て膨らみを与える、という効果は同質だ。さらに「Too Many Angels」の場合は「Angels」というテーマゆえか、神秘的な広がりも感じさせる。この辺りが懐かしくもあり、新鮮でもある所以だ。

 

また「I'll Do Anything」はJackson Browneのメロディセンスが素直にあらわれた佳曲だ。ストレートな感じで曲は始まるが、要所要所でJackson Browneならではの節回しが現れ、曲を引き締める。

 

シングルカットもされた「Sky Blue and Black」はスケールの大きなバラードで、ピアノの響きやギターの音色と、Jackson Browneのうねるボーカルが絶妙に絡み合う。曲の世界観は「Late for the Sky」と通じるものがあり、聴いていると胸の中に何か甘酸っぱいものが湧き上がってくる。

 

このほか「Miles Away」「Take This Rain」といった曲も、ストレートな曲調なのだが、「Saturate Before Using」や「For Everyman」といった初期の息遣いを感じさせてくれる。全編を通じて、懐かしさと新鮮さを感じさせてくれる1枚だ。

 

1.I'm Alive

2.My Problem Is You

3.Everywhere I Go

4.I'll Do Anything

5.Miles Away

6.Too Many Angels

7.Take This Rain

8.Two of Me, Two of You

9.Sky Blue and Black

10.All Good Things